服役中の任意売却
神奈川県大和市内の中古マンションを所有しているCさんの弟より手紙を
受け取った。兄の持っているマンションを売却したいのだが、特殊な事情が
あり途方に暮れているという。お会いして事情をお聞きしたところ、Cさん
は重大な自動車事故を起こし現在拘置所に拘留中、銀行ローンも滞りだして
ているとのこと。
Cさんの国選弁護人へ協力を求めたところ、「当職は被告の物件の売却に
は一切関知しない」の一点張り、協力を得ることはできなかったものの、勝
手にCさんへアプローチすることについては伝えることができた。
柔軟な対応をしてくれる司法書士とともにCさんのいる拘置所を訪れてみ
たものの、門前払い。拘置所への面会は一か月あたりの回数が決まっていて
今月はもう面会はできませんとのことであった。
弟さんを通じ次月の面会を約束してもらい、翌月再訪問、ところが、今度
は、拘置所の職員より「本人が会いたがっていないので面会できません」と
またしても断られてしまった。事情を尋ねたところ、実はCさんは性同一障
害で、服役中で髪の毛もそられてしまい、汚い服を着させられている状態が
恥ずかしく、男性にそのような姿を見られたくないという心理状態にあった
らしい。刑務官に「私は不動産屋ですが、女性なので心配しないでと伝えて
下さい」と伝言をお願いしたところ、ようやくお会いすることができた。
Cさんは、今後の銀行ローンの支払い継続を危惧しており物件の売却を望
んでいることを確認、司法書士と当社への委任契約を結び、銀行折衝と物件
の売却を開始、Cさんはいつ、今いる拘置所からどこかの刑務所へ移送され
てしまうかわからない状況であったため、早期に買受先を探し、銀行への担
保解除の承諾を得て、何とか早期売却を成功させることができた。
現在、Cさんは服役を終えて外に出ることができたのか、一切連絡もなく
その後の状況は分かりません。
元気に過ごしてくれているといいのですが…
拘留中の方を売主とする売買は、予想できないハードルがたくさんあって
実際に媒介契約をどう締結するか、印鑑証明をどう取得するか、等大変なこ
とがたくさん体験できましたが、何でもやってやれないことはないなと感じ
ました。私にとっても貴重な体験でした。
相談に来られる方、それぞれの事情があります。
あらゆるケースで解決の道筋がすぐに決まるというわけではありません。
でも、必ず、方法はあるはずです。
あきらめずに、一緒に歩く方向を探していきたい、そう感じさせてくれた
事例でした。
先ずはお問い合わせください。